シラバス情報

授業情報
※身につく能力について
複数の学科・専攻・コースで開講されている科目は、開講を担当する学科・専攻・コースの定めた「身につく能力」を表示しているため、履修要項・大学院要覧記載の「身につく能力」とは異なるものが表示されていることがあります。
授業によっては、「身につく能力」の記載がない場合もあります。
そのため「身につく能力」については履修要項・大学院要覧も確認するようにしてください。
授業コード   Course Code 1CF0093001
授業開講年度   Year of Class 2024年度
授業形態   Course Mode 講義(対面授業)
授業名称   Class Name フランス社会の諸相B
テーマ   Theme
科目名   Name of Subject フランス社会の諸相B
英字科目名
English Name of Subject
Aspects of french society B
身につく能力
Ability to be Acquired in This Class
◎=科目に最も関連する能力
〇=科目に関連する能力
知識・理解 フランス語圏の言語・文化についての広範な知識
知識・理解 フランス語圏の言語や文化についての個別的知識の習得
汎用的技能 情報収集力
汎用的技能 フランス語の実践的な運用能力及び知識をもとにした思考の相対化
態度・志向性 多様な文化のあり方を追求する姿勢
統合的な学習経験と創造的思考力 問題提起力
統合的な学習経験と創造的思考力 論理的かつ説得的見解を述べる力
科目単位数   Credit 2
履修期   Term 秋学期
教員氏名   Name of Teacher 野村 佳世
開講キャンパス   Campus 白金
曜時   Day and Period 火曜2時限(秋学期)
授業概要   Course Description 本講義では、フランスの移民政策を切り口に、現代フランス社会を考えていく。
まず、「移民問題」を論理的に分析・解釈するために、「文明の衝突」論を批判的に考察する。さらに、フランスの「移民問題」を統計資料を使って具体的に明らかにし、現状確認をする。それを踏まえて、第二次大戦後から現代までの移民政策を紹介し、フランスが「移民問題」にどのように対応してきたのかを説明しながら、移民政策と「移民問題」の関連性を考えていく。また、映像資料を用いることで、「移民」当事者側の意見も紹介していく。こうした作業を通して、フランスにおける移民と受け入れ社会双方の視点・事情を理解する。
授業は講義形式でおこなう。映像資料を使った際には、リアクション・ペーパーの提出を求める。
到達目標   Class Goals ・フランスの「移民問題」を理解し、説明できる
・「一民族一国家」という国民国家の形態を批判的に考える思考を身につけられる
・国民国家の枠組みからすれば「他者」となる外国人を、「同じ社会の住民」として捉えなおす見方ができる
・フランスの事例を他の社会と比較できる
・映像資料を通して、移民がどのような思いで移住先に暮らしているのか、そのアイデンティティのあり方や暮らしぶりを知ることで、異文化コミュニケーションや他者理解に必要な知識・視点を身につけられる
・多文化化する社会の問題に応用・対処できる
授業言語   Language 日本語+フランス語
アクティブ・ラーニング   Active Learning アクティブ・ラーニング対応
授業計画
Daily Class Schedule
【第1回】 授業内容
Content/Topic
Introduction―「文明の衝突」という言説とその課題―
予習内容
Preparation for Class
参考文献のサミュエル・ハンチントン『文明の衝突』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
「文明の衝突」の議論が持つ問題点をまとめておくと、異文化コミュニケーションや他者理解に必要なものや第3回目以降の講義を理解するのに役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第2回】 授業内容
Content/Topic
「移民」とは誰か、「移民問題」とは何か―統計資料から―

移民人口の推移、出身国の推移、フランス国内の居住地分布、移住目的、婚姻状況、出産率、住宅事情、貧困率、家庭内言語、失業率、月収などのさまざまなデータを使って、移民の特徴や生活実態を明らかにする。
予習内容
Preparation for Class
INSEE:http://www.insee.fr/やINED:http://www.ined.fr/のURLから関連する情報を探しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
統計データから見えたフランスの「移民問題」について、どのような出身地の、どのような背景を持った「移民」が問題とされているのか、そうした「移民」がどのような困難を抱えているのかを中心に整理しておくと、次回以降の講義を理解するのに役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第3回】 授業内容
Content/Topic
移民はなぜフランスに来たのか―映画『移民の記憶 父』の鑑賞・検証―(リアクション・ペーパー提出予定)

第二次大戦後に労働力として大量に導入されたマグレブ系移民のインタヴューを通して、当時の状況を振り返りながら理解する。
予習内容
Preparation for Class
参考文献の宮島喬編『移民の社会的統合と排除―問われるフランス的平等―』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
予習した内容と映画の内容を踏まえて、戦後の経済成長期におけるフランスの移民政策や移民たちの思いをまとめておくと、次回の講義やフランスの移民史、異文化コミュニケーションや他者理解に役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第4回】 授業内容
Content/Topic
「栄光の30年」と移民労働者

戦後復興と高度経済成長期のフランスにおける移民政策を紹介する。
予習内容
Preparation for Class
参考文献のアリック-G. ハーグリーブス(石井伸一訳)『現代フランス―移民からみた世界―』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを見返しながら、当時のフランスの社会事情、それに基づいた政策内容、政策設計時の想定、実際に起きた社会変化、新たな問題点などの項目に分けてまとめておくと、フランスの「移民問題」の背景を理解するのに役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第5回】 授業内容
Content/Topic
移民の定住化と「移民問題」の政治化

1980年代の移民政策について紹介する。
予習内容
Preparation for Class
フランソワーズ・ギャスパール&クロード・セルヴァン=シュレーベル(林信弘監訳)『外国人労働者のフランス―排除と参加―』や 林瑞枝『フランスの異邦人―移民・難民・少数者の苦悩―』などの参考文献に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを見返しながら、当時のフランスの政治的変化、それに基づいた政策内容、政策設計時の想定、実際に起きた社会変化や世論の反応、新たな問題点などの項目に分けてまとめておくと、フランスの「移民問題」の背景を理解するのに役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第6回】 授業内容
Content/Topic
共和国と「移民」のアイデンティティ―映画『移民の記憶 子ども』の鑑賞・検証―(リアクション・ペーパー提出予定)

フランス生まれフランス育ちであるマグレブ系移民子弟のインタヴューを通して、多文化化するフランスの事情を理解する。
予習内容
Preparation for Class
参考文献のアリック-G. ハーグリーブス(石井伸一訳)『現代フランス―移民からみた世界―』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
予習した内容と映画の内容を踏まえて、1980年代以降の移民を取り巻くフランス社会の変化や移民の世代交代が進んだことによる影響などをまとめておくと、次回の講義を理解したり異文化コミュニケーションや他者理解のために役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第7回】 授業内容
Content/Topic
フランス的多文化主義への挑戦と限界

1980年代以降、フランスは移民の社会統合を政策として積極的に推進し、移民の文化的相違を尊重するようになったのだが、その反面で、従来のフランス的制度・価値との齟齬が意識されるようになった。その結果、どこまで文化的な相違を受け入れるのかを巡って様々な論争が起きるようになった。今回は、そうした論争を取り上げて解説する。
予習内容
Preparation for Class
ロジャース・ブルーベイカー(佐藤成基・佐々木てる監訳)『フランスとドイツの国籍とネーション―国籍形成の比較歴史社会学―』やジャクリーヌ‐コスタ=ラスク(林瑞枝訳)『宗教の共生―フランスの非宗教性の視点から―』、中野裕二 『フランス国家とマイノリティ―共生の「共和制」モデル―』などの参考文献に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを見返しながら、多文化主義をめぐる各論争(国籍法改正論争、スカーフ事件、「郊外」)の争点と共和国モデルの特徴などについてまとめておくと、社会の多文化化にともなう課題や「文明の衝突」論の問題点を理解するのに役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第8回】 授業内容
Content/Topic
「郊外」とは何か―概説―

「郊外」がどのような経緯で形成されたのか、どのような特徴・問題があるのか、現状はどうなのかについて説明する。
予習内容
Preparation for Class
「総特集 フランス暴動―階級社会の行方―」『現代思想』2006年2月号や森千香子『排除と抵抗の郊外−フランス<移民>集住地域の形成と変容−』などの参考文献に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを使って、「郊外」の特徴を押さえておくと、次回鑑賞する映画で説明されない背景を把握できるので、登場人物の行動や心情をより正確に読み取ることができる。 目安時間
Hours
2 時間
【第9回】 授業内容
Content/Topic
「郊外」とは何か―映画『憎しみ』の鑑賞・検証―(リアクション・ペーパー提出予定)
予習内容
Preparation for Class
前回のレジュメと復習内容を見返して、「郊外」の事情を把握しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
映画の内容から、「郊外」の住人が抱える葛藤や困難がどのようなものだったかをメモしておくと、社会の多文化化にともなう課題や異文化コミュニケーション、他者理解に役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第10回】 授業内容
Content/Topic
EUとフランスの移民政策―「難民」の締め出しと域内格差の出現―

EUの共通移民政策がどのように進展してきたのかについて説明すると同時に、共通移民政策の枠組みがフランスの移民政策にどのような影響を与えているのか、移民の権利や地位にどのような変化をもたらしたのかについて解説する。
予習内容
Preparation for Class
参考文献の庄司克宏『欧州連合―統治の論理とゆくえ―』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを使って、EUの共通移民政策によって出来たルールの内容と移民に与えた影響についてまとめておくと、次回鑑賞する映画を理解するのに役立つうえ、複雑な難民問題の構造を知ることができる。 目安時間
Hours
2 時間
【第11回】 授業内容
Content/Topic
国境を越える社会問題―ドキュメンタリー映画『海は燃えている』の鑑賞・検証―(リアクション・ペーパー提出予定)

「アラブの春」以降、EUを目指す難民の増加が社会問題として注目されている。難民はどのようにして地中海を渡って来るのかについて、難民の受け入れ窓口として有名なイタリアのランペドゥーサ島を舞台に、その実態を把握する。この事例を通して、フランスの移民問題がヨーロッパ規模まで広がっている状況を理解する。
予習内容
Preparation for Class
前回のレジュメと復習内容を熟読して、EUの共通移民政策によるルールを把握しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
映画から分かった難民の実態を通して、EUの共通移民政策が抱える問題点をまとめる。とりわけ、EU内部の難民問題をめぐる対立やそれによる国内政治への影響などについてまとめておくと、国境を越えた人の移動が持つ管理の難しさや移民の人権問題などのグローバル化に伴う社会問題を考えるのに役立つ。 目安時間
Hours
2 時間
【第12回】 授業内容
Content/Topic
家族移民・難民の受け入れから高技能移民の受け入れへ―「サン・パピエ」の顕在化―

1990年代以降、フランスは移民の入国・滞在を規制する方針をとるようになる。その結果、移民の基本的人権と国境管理のあり方をめぐる議論が噴出する。ここでは、フランスはどのような基準で移民の権利保障と規制を実現していくのかという問題について、「サン・パピエ」の運動に注目しながら説明する。
予習内容
Preparation for Class
参考文献の宮島喬編『移民の社会的統合と排除―問われるフランス的平等―』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを見返して、1990年代以降の国境管理に関するルールとその背景にある要因、移民の権利や地位への影響、政策に対する移民や世論の反応、政策の変化などについてまとめておくと、移民に対する規制と権利保障が政策的に正当化される過程を理解することができると同時に、国境を越えた人の移動が国民国家の枠組みを揺るがしている現状を認識できる。 目安時間
Hours
2 時間
【第13回】 授業内容
Content/Topic
差異の尊重から価値観の共有へ―「イスラーム系移民」は統合できないのか―

1989年の「スカーフ事件」以降、フランスでイスラームをどのように受け入れていくのかについて議論が続いている。ここでは、「スカーフ論争」を中心にフランスの文化的多様性をどう成立させるのかをめぐる1990年代以降の社会統合政策の変遷を取り上げ、フランスの移民に対する統合モデルの変化を考える。
予習内容
Preparation for Class
参考文献の ジョーン・W・スコット(李孝徳訳)『ヴェールの政治学』に目を通す。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
レジュメを確認しながら、「スカーフ論争」に対するフランスの対応の変化とその背後にある統合論理の変化をまとめておく。こうすることで、「一民族一国家」という国民国家の枠組みで多様な文化を受け入れる難しさを理解できると同時に、「文明の衝突」論の持つ問題点を再確認できる。 目安時間
Hours
2 時間
【第14回】 授業内容
Content/Topic
文化的多様性と共和国―映画『スカーフ論争:隠れたレイシズム』の鑑賞・検証―(リアクション・ペーパー提出予定)

スカーフを被っている当事者やそれを支援する人々のインタヴューを通して、フランス側の視点からは見えない「スカーフ論争」の問題点を考える。
予習内容
Preparation for Class
前回のレジュメと復習内容を熟読して、フランス側の「スカーフ論争」に対する考え方を把握しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
映画から分かったスカーフを被る当事者の意見をメモし、前回の講義で説明したフランスの意見とどのように違うかを整理しておく。それによって、社会の多文化化にともなう課題や「文明の衝突」論の持つ問題点を再確認できるうえ、異文化コミュニケーションや他者理解に必要なものは何かを考える糸口が見つかる。また「スカーフ論争」の対立を解決するためには、「異文化の移民=他者」ではなく、「同じ社会の住民」と読み替える大切さを実感できる。 目安時間
Hours
2 時間
【第15回】 授業内容
Content/Topic
まとめと課題作成
予習内容
Preparation for Class
これまでのレジュメを熟読しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
講義で扱ってきたさまざまな「移民問題」のなかで、最も関心のある論点を選び出し、期末レポートを作成する。 目安時間
Hours
2 時間
授業に関する注意事項   
Remarks for Class
映像鑑賞後のリアクション・ペーパーの提出は、manabaを通して行う。また提出物に対しては、毎回教員からコメントが返信される。
manabaにアップロードされている資料を無断転載・引用することは認めない。さらに、無断で授業を録画することも認めない。

リアクション・ペーパーを提出した翌週の講義冒頭で、学生の質問に回答したり、出された意見に対して教員がコメントしたりする。教員側の説明に対して、さらに学生から質問や意見がある場合は、時間をとってディスカッションをおこない、議論・理解を深める。

期末レポートは返却しない。コメントが必要な学生は、その旨を提出の際に教員に伝えることで、後日メールでレポートに対するコメントが受けられる。
教科書   Texts 資料はすべてmanabaにアップロードする。
参考書   Reference Books 授業計画の予習欄に記載した文献のほか、授業中に適宜紹介する(レジュメ参照)。
課題フィードバック方法区分
Assignment Feedback Method
授業時間内に講評・解説を行い、授業時間外はmanabaで行う
課題フィードバック方法内容
Assignment Feedback Method Content
成績評価の基準   
Evaluation Criteria
授業への参加度(10%)、取り組み姿勢(20%)、期末レポート(70%)で評価する。

取り組み姿勢については、授業中に提出を要求する5回のリアクション・ペーパーで採点する。

また期末レポートについては、内容の正確性・論理性・具体性を踏まえて総合的に評価する。レポートの内容や評価基準については別途、学生にプリントで通知する。レポートが未提出の場合は、単位を認定しない。
関連URL   Related URL 授業計画の予習欄に記載した文献のほか、授業中に適宜紹介する。
備考   Notes
添付ファイルの注意事項   Notice
更新日時   Date of  Update 2024年03月19日 15時00分32秒