シラバス情報

授業情報
※身につく能力について
複数の学科・専攻・コースで開講されている科目は、開講を担当する学科・専攻・コースの定めた「身につく能力」を表示しているため、履修要項・大学院要覧記載の「身につく能力」とは異なるものが表示されていることがあります。
授業によっては、「身につく能力」の記載がない場合もあります。
そのため「身につく能力」については履修要項・大学院要覧も確認するようにしてください。
授業コード   Course Code 1HC2314000
授業開講年度   Year of Class 2024年度
授業形態   Course Mode 講義(対面授業)
授業名称   Class Name SGLEC256消費の社会学
テーマ   Theme
科目名   Name of Subject SGLEC256消費の社会学
英字科目名
English Name of Subject
Sociology of Consumption
身につく能力
Ability to be Acquired in This Class
◎=科目に最も関連する能力
〇=科目に関連する能力
知識・理解 ①社会学的な理論と概念に関する知識
知識・理解 ②現代社会の諸問題に関する知識
汎用的技能 ③社会調査の知識・技能
汎用的技能 ④社会学的考察を伝える実践力
態度・志向性 ⑤社会を論理的かつ批判的に考察する態度
統合的な学習経験と創造的思考力 ⑥課題発見力・問題解決力
科目単位数   Credit 2
履修期   Term 秋学期
教員氏名   Name of Teacher 石川 洋行
開講キャンパス   Campus 白金
曜時   Day and Period 火曜4時限(秋学期)
授業概要   Course Description 消費の観点から戦後日本社会史を概観する。それを通じ、消費社会論の歴史についても学ぶ。

とりわけ「文化と政治」の関係性に焦点を当て、1920年代から3.11以後までの社会史を振り返る。それは必然的に、1950年代に形成された日本特殊的な政治-経済システム(日本型消費社会)の形成過程とその現在地を理解し、その先を考える作業となる。授業は以下3部構成をとる。

〔第1部〕消費社会論の系譜(1-5回)
消費社会論においては、ヴェブレンの顕示的消費にはじまり、フランクフルト学派の文化産業論、ガルブレイスの依存効果論、ボードリヤールの消費記号論などの理論が都度紹介されてきた。これらはすべて、「近代社会に対する自己意識」として生まれた社会学の、現代的応答の形である。これら「最も純化された社会批評」である社会理論の歴史を通じ、戦間期ヨーロッパ・戦後アメリカ・80年代日本といった各時代状況に接近する。

〔第2部〕消費社会史からみる戦後日本(6-9回)
音楽とサブカルチャーを題材に、戦後史を概観する。フォークソングの表現形式がニューミュージックに継承される過程や、80年代アイドルが新人類の代弁者となる状況は、各世代の社会意識を如実に反映した好例である。これに関連し、「広告の世紀」1980年代の分析は必須である。
この点、とりわけ〈1968〉学生運動が与えた影響を無視することはできない。「政治の季節」は人口成長期における最後の世界的高揚であったが、それゆえ豊穣な文化と後の社会的リーダーの輩出にもつながった。他方、その後消費社会と脱政治化の更なる進展は、社会運動の高齢化とあらゆる無関心を引き起こしている。こうして「失われた30年」を経て到達した自己啓発型社会の系譜を辿り、我々をとりまく閉塞感の原因を探る。

〔第3部〕消費社会と政治(10回-14回)
消費者運動や公害史を題材に、消費者と政治の関係性を扱う。とりわけ3.11以後、「風評被害」「復興」という行政用語が連呼され、科学的基準の無視と非科学的な政策決定が強行されることで、被害地域では棄民と分断が続き、全国的には問題の不可視化が起っている。この背景には、業界(産官学)をあげた被害否認があり、その「カガクテキ」言説の多くは行政宣伝と一体化したPRとして、市民科学と対立している。こうした状況下では、消費者としての私たちは、流通を通して皆「政治的に巻き込まれている」ことを前提すべきであり、「賢い消費者」等のスローガンを越えた、確実かつ公正な社会行動が模索される必要がある。とりいそぎ、原発事故をめぐる消費者問題(食をめぐる分断と「風評」の擬似社会問題化)を手掛かりに、「文系と理系」「半径5メートルと政治」等の敷居を取去り、これからを生き抜くための実践知を模索する。

post-truthと呼ばれるなか、「現実が先を行く」状況が続いている。こうした下では、知の確実さを更新し社会に応答していく姿勢は必須である。原発事故後の科学論や、陰謀論政治の登場といった主題は、こうした問題を考える試金石となるだろう。また、必然的に、「応援消費」「推し消費」といった近年の消費分析の問題点も自ずと明らかになる。

社会的事実に基づいて思考することに貪欲な学生を歓迎する。
到達目標   Class Goals (1)現代消費社会を理論と実証の双方から総体的に理解する。
(2)戦後日本の社会史について、とりわけ大衆音楽史/メディア史、社会運動史/政治史の観点から読み解く視点を得る。
(3)3.11以後顕在化した科学の言葉の歪み・政治をめぐる混乱を踏まえ、明晰な言語認識に基づいた学際知を身につけ、日常生活レベルで実践的に使用できるようになる。
授業言語   Language 日本語
アクティブ・ラーニング   Active Learning アクティブ・ラーニング対応
授業計画
Daily Class Schedule
【第1回】 授業内容
Content/Topic
ガイダンス:17世紀帝国主義と「消費社会」の誕生
予習内容
Preparation for Class
授業参考書に指定した文献を何冊か図書館で入手しておく(大学所蔵書は予約混雑が予想されるので、地元の公共図書館等をうまく使うこと)。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第2回】 授業内容
Content/Topic
フランクフルト学派と〈神話〉との闘い:1920-30年代ヨーロッパ
予習内容
Preparation for Class
「消費社会における認識問題」第1・2節を読んだうえで、映画「17歳のヴィーン:フロイト教授人生のレッスン」(ニコラウス・ライトナー、2020年)を視聴しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第3回】 授業内容
Content/Topic
リースマン・ガルブレイスと戦後消費社会の繁栄:1950年代アメリカ
予習内容
Preparation for Class
「消費社会における認識問題」第2節を読んだうえで、地元図書館でフィッツジェラルド「グレート・ギャッツビー」を読む。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第4回】 授業内容
Content/Topic
ボードリヤールと構造主義の革命:1960年代フランス
予習内容
Preparation for Class
映画「地下鉄のザジ」(ルイ・マル、1960年)を視聴しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第5回】 授業内容
Content/Topic
戦後成長の終焉と「新中間大衆」の登場:1970-80年代日本
予習内容
Preparation for Class
「消費社会における認識問題」第4節を読んだうえで、居住選挙区の衆院選選挙結果(政党と票数)を20年分確認する。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第6回】 授業内容
Content/Topic
音楽と消費社会① 余暇の不可能性と70年代フォークの政治的変節
予習内容
Preparation for Class
記録映画「だからここに来た!全日本フォークジャンボリーの記録」を視聴しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。その際、授業内で紹介した音楽を一通り視聴しておく(岡林信康、小室等、井上陽水、Yello Magic Orchestra、松任谷由実、山口百恵など) 目安時間
Hours
2 時間
【第7回】 授業内容
Content/Topic
音楽と消費社会② 80年代アイドル:若者の「個性化」と強いられる自分探し
予習内容
Preparation for Class
中間課題(書評レポート)対象書の読解。加えて「ザ・ベストテン」について簡単に調べてくる。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。その際、授業内で紹介した音楽を一通り視聴しておく(松田聖子・中森明菜の全シングル、その他柏原芳恵、小泉今日子、菊池桃子、斉藤由貴、おニャン子クラブ、本田美奈子など)。 目安時間
Hours
2 時間
【第8回】 授業内容
Content/Topic
1980年代ユースカルチャーとマーケティングの世紀:新人類・臨教審・広告化社会
予習内容
Preparation for Class
中間課題(書評レポート)対象書の読解。加えて堤清二について簡単に調べてくる。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第9回】 授業内容
Content/Topic
1990年代ユースカルチャーと「癒し」を求める若者たち:オウム・就活・自己啓発
予習内容
Preparation for Class
中間課題(書評レポート)の作成。加えてオウム真理教事件について簡単に調べてくる。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第10回】 授業内容
Content/Topic
消費者の政治史① 「消費者」の誕生と戦間期リベラリズム:賀川豊彦の蹉跌
予習内容
Preparation for Class
中間課題(書評レポート)の作成。加えて賀川豊彦の活動について簡単に調べてくる。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第11回】 授業内容
Content/Topic
消費者の政治史② 「生活者」の歴史と90年代日本政治:生協から民主党政権まで
予習内容
Preparation for Class
中間課題(書評レポート)の作成。加えて在住地域の生活協同組合(COOP)の活動について調べてくる。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第12回】 授業内容
Content/Topic
フクシマ以後の消費① リスクの押しつけと「風評」の標的化
予習内容
Preparation for Class
「消費社会における認識問題」第1章第5節を読んだうえで、影浦峡『3.11以後の放射能「安全」報道を読み解く』(現代企画室)を読んでくる。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第13回】 授業内容
Content/Topic
フクシマ以後の消費② 消費社会論から科学技術社会論(STS)へ
予習内容
Preparation for Class
指定したドキュメンタリー映画を視聴し、簡単な感想を書いてくる 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第14回】 授業内容
Content/Topic
陰謀論・トランプ主義・ネット右翼:2010年代における「虚偽の消費」とシミュラークルの政治化
予習内容
Preparation for Class
映画「マトリックス」(ウォシャウスキー兄弟、1999年)を視聴しておく。 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
授業配布資料を読解し、課題演習に回答する。 目安時間
Hours
2 時間
【第15回】 授業内容
Content/Topic
(※特別学修日)
予習内容
Preparation for Class
試験に向けた全授業内容の確認・復習 目安時間
Hours
2 時間
復習内容
Review of Class
試験に向けた全授業内容の確認・復習 目安時間
Hours
2 時間
授業に関する注意事項   
Remarks for Class
(1)教員含め共に学び合う存在であることを忘れず、他者に対する対話と敬意をもって授業に臨むこと。
(2)必ずノートを取ること(授業資料は事後公開とする)。
(3)設問(クイズ)・映像視聴・質疑応答を交えた双方向的授業を展開する。受け身の受講は卒業すること。
(4)高校までの知識(特に世界史・政経・倫理)を都度確認する癖をつけておくこと。
(5)ゲストスピーカーを招くことがある。見知らぬ他者の活動に対して敬意を持って接すること。
(6)積極的に質問すること。

扱う領域は社会学ほか、哲学、人類学、宗教学、政治学、経済学、メディア論、環境学、精神分析、フェミニズム、科学史、科学技術社会論(STS)等多岐に渡る。「知の大海を冒険する」ことを厭わず、貪欲に本を読み、社会経験を増やしていくこと。やわらかい感性を持った学生の積極的参加を歓迎します。
教科書   Texts 永田大輔・松永伸太朗・中村香住編『消費と労働の文化社会学』(ナカニシヤ出版)。ただし、授業説明部分はコピーを配布するので購入必須ではない。

なお、授業後半で、以下のいずれかを選択し紹介する中間レポート[書評形式]を課すので、計画的に読み進めること。

(1)見田宗介『現代社会の理論』(岩波新書)
(2)大澤真幸『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)
(3)堤清二『無印ニッポン』(中公新書)+辻井喬・上野千鶴子『ポスト消費社会のゆくえ』(文春新書)(※)
(4)影浦峡『信頼の条件――原発事故をめぐることば』(岩波科学ライブラリー)

※堤清二は対談本のため2冊。『ポスト消費社会のゆくえ』は辻井喬『詩が生まれるとき』(講談社現代新書)と代えても良いが、絶版のため図書館・古書店などで探すこと。
参考書   Reference Books どれも重要なので、大学4年間で頃合いを見て少しずつ揃えていくのが望ましい。その他適宜紹介する。

(第1部:消費社会の理論)
ベンヤミン『ボードレール 他』野村修訳(1994)岩波文庫.
リースマン『孤独な群衆 上・下』加瀬秀俊訳(2013)みすず書房.
ボードリヤール『消費社会の神話と構造 新装版』今村仁司・塚原史訳(1979)紀伊国屋書店.
見田宗介『社会学入門』(2006)岩波新書.
内田隆三『消費社会と権力』(1987)岩波書店.
稲葉振一郎『「新自由主義」の妖怪――資本主義史論の試み』(2018)亜木書房.
松原隆一郎『消費資本主義のゆくえ――コンビニから見た日本経済』(2000)ちくま新書.

(第2部:消費社会と戦後日本)
大木晴子・鈴木一志編『1969――新宿西口地下広場』(2014)新宿書房.
三浦展『郊外・原発・家族――万博がプロパガンダした消費社会』(2015)勁草書房.
中川右介『増補 松田聖子と中森明菜』(2014)朝日文庫.
内田隆三『TVCMを読み解く』(1997)講談社新書.
辻井喬・上野千鶴子『ポスト消費社会のゆくえ』(2008)文春新書.
三浦展・上野千鶴子『消費社会から格差社会へ――1980年代からの変容』(2010)ちくま文庫.
北田暁大『広告の誕生――近代メディア文化の歴史社会学』(2000)岩波書店.
北田暁大『増補 広告都市・東京』(2011)ちくま学芸文庫.
浅野智彦『若者とは誰か――アイデンティティの30年』(2018)河出書房新社.
若林幹夫『郊外の社会学――現代を生きる形』(2007)ちくま新書.
吉見俊哉『リアリティ・トランジット――情報消費社会の現在』(1996)紀伊国屋書店.
井上俊編『現代文化を学ぶ人のために』(2014)世界思想社.
難波功士『「広告」への社会学』(2000)世界思想社.
小谷敏編『若者論を読む』(1993)世界思想社.
大澤真幸『増補 虚構の時代の果て』(2011)ちくま学芸文庫.
高山文彦『麻原彰晃の誕生』(2018)新潮文庫.

(第3部:消費社会と政治、そしてこれから)
天野正子『「生活者」とはだれか――自律的市民像の系譜』(1996)中央公論新社.
影浦峡『3.11後の放射能「安全」報道を読み解く』(2011)現代企画室.
牧野淳一郎『原発事故と科学的方法』(2013)岩波科学ライブラリー.
牧野淳一郎『被曝評価と科学的方法』(2015)岩波科学ライブラリー.
日野行介・尾松亮『フクシマ6年後 消されゆく被害――歪められたチェルノブイリ・データ』(2017)人文書院.
日野行介『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(2013)岩波新書.
日野行介『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』(2014)岩波新書.
津田敏秀『医学者は公害事件で何をしてきたのか』(2014)岩波現代文庫.
青木美希『なぜ日本は原発を止められないのか?』(2023)文春新書.
三原由起子『歌集 土地に呼ばれる』(2022)木阿弥書店.
石川洋行「権力の不快なねじれ――「陰謀論」論序説」『情況』2021年秋号
ハンナ・アーレント『全体主義の起源 1・2・3(新版)』大島通義・大島かおり訳(2017)みすず書房.
課題フィードバック方法区分
Assignment Feedback Method
授業時間内に講評・解説を行い、授業時間外はmanabaで行う
課題フィードバック方法内容
Assignment Feedback Method Content
成績評価の基準   
Evaluation Criteria
平常点(10%)、中間ブックレポート(30%)、試験(60%)
関連URL   Related URL
備考   Notes
添付ファイルの注意事項   Notice
更新日時   Date of  Update 2024年02月25日 07時25分05秒